コンプライアンス対策の一環として、他社がどのようなコンプライアンス対策を取っているのかを調べたり、専門家の意見を聞いたりする企業が多くあります。
しかし、今のままでそんなことをやっても無駄ではないかと私は危惧しています。
なぜなら、コンプライアンス部自体が(自部門である)「コンプライアンス部の問題点」に気づいておらず、それが放置されているように見えるからです。
あなたにお聞きします。
「コンプライアンス経営を実現させるコンプライアンス部」ってどんなコンプライアンス部か知っていますか?
そういうコンプライアンス部になるために大切なこと、知っていますか?
それは、以下です。
「コンプライアンス部」あるいは「コンプライアンス担当」の仕事は何か?
- データを集めることではありません。
- レポートを書くことではありません。
- 規則をつくることではありません。
- 仕組みを導入することではありません。
- マニュアルを整備することではありません。
- 研修を企画実施することではありません。
その前に満たしておくべき事項があります。
- コンプライアンスを人に語るに足る見識を身につけているか?
→重みが無い人からの苦言は聞き流される。 - 自分自身の発言と行動を一致させているか?
→言っていることとやっていることが一致しない人を信用する人はいない。 - 一個の人間として、自分なりの社会観や人間観を確立させる努力をしているか?
→そういう「苦しみ」を体に刻みこんでいない人に迫力は生まれない。 - 他部署へ求める事項は、まず、他部署よりも高いレベルで取り組み行動しているか?
→自分がやっていない/やっていてたとしてもその質が貧弱だったら、他に要求などできない。
「コンプライアンス部」あるいは「コンプライアンス担当」だったら
- データを集めたり
- 規則を作ったり
- 仕組みやマニュアルを整備したり
- 研修を企画したり
などする前に
「この人は正論を吐くが、確かにそれに値する人だ」 と周りの人に思わせる態度や行動を、身をもって示さねばなりません。
「この集団は正論を吐くが、確かにそれに値する集団だ」 とどこの部からも一目置かれていなければなりません。
すなわち、
- コンプライアンスの仕事の本質とは何か?
コンプライアンスの仕事の本質は「欲望や権力との戦い」です。
・・・あなたは上司と本気で勝負できますか?
・・・上司は社長と本気で勝負できますか? - コンプライアンスの問題の本質とは何か
コンプライアンスは規則や仕組みの問題でなく、人間の問題です。
・・・あなたは人に苦言を呈するに値する日常を送っていますか?
・・・上司は人に苦言を呈するに値する言動を身をもって示していますか? - コンプライアンスを守らせるという問題の本質はどこにあるのか?
仕組みで全てを守ることなど無理。最後は人間が人間をストップさせなければなりません。
・・・いざという時、あなたは、あなた自身の人格の全てをかけて勝負する準備はできていますか?
・・・周囲はいざという時、腰砕けになりませんか?
「人間の問題を解決するためには、解決しようとする人間がまず解決されていなければならない」と私は考えます。
これを手薄にしたままで「他人にコンプライアンスを守らせる」ことなどできませんし、策を弄したところで誰も振り向きません。
コンプライアンス対策や他社の事例などを調べる暇があったら、もっと重要なことを先にやるべきです。
それは「自分たち自身の問題を解決しておくこと」です。
なぜなら 最初にやるべきでかつ最も大切なコンプライアンス対策とは、「自分自身の問題の解決」=「コンプライアンス部の問題点をつぶすこと」だからです。
(出所:中沢努「人間としてのコンプライアンス原論」)
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