組織自浄力の源泉とそれを出現させるきっかけ

ある会社でトラブルがあり、その影響が顧客に及んだ。
それは「また?」「まだ?」「いいかげんにしてほしい」という感情を引き出し、その会社の提供物に対する興味を失わせかねないものだった。

トラブルに関する説明はあまりなかったし、そのタイミングもどちらかといえば後手後手に回っているように見えた。

「顧客の目線に立った説明をしたほうがいいのではないか」という類の議論がなされたのかどうかは知らないが、十分とは言い難い…せいぜい「事故で電車が止まっています」程度のものでしかなかった。
(ここで言っている電車というのはあくまでもたとえであり実際は電車のトラブルではない。)

「電車が止まっています」程度のことは言われなくても分かっていたし、「原因が何で」「それに対して何をしていて」「これからどうなるのか」がわからなければ顧客は手の打ちようが限られてしまう。

顧客はストレスを感じた。

そんなさなか、会社に一通のメールが届いた。顧客の一人からであった。メールにはこう書いてあった。

「トラブルがあったときは悪い情報であれきちんと公開し説明責任を果たしたほうがいい。それができないとその企業の評判が落ちるというのは既に起こった他社事例の教訓だ。顧客に対し、何がどうなっていて、いつまでにどうするのか、という説明を行ったらどうでしょう。このメールが関係者をはじめ貴社経営陣にきちんと伝わることを期待します。」

そして、会社は動いた。

  • この会社には「メールの内容をきちんと上司に伝える担当者」がいました。
  • この会社には「部下の話しをきちんと聞く上司」がいました。
  • この会社には「顧客からの指摘を受け止め、話しあい、行動する社員たち」がいました。

間違いはどこにでもあり、誰だってミスはするもの。会社とてそれは同じです。
それに対する適切な行動の集積が組織を自浄するエネルギーの原石となるのです。

  • あなたこの会社の担当者のような人ですか?
  • あなたこの会社の上司のような人ですか?
  • あなた他人からの指摘に耳を傾け、話し合い、行動する社員ですか?

組織自浄力の源泉は人間です。
そして組織を自浄させるきっかけ何気ない日常に潜んでいます。

出所:中沢努「思考のための習作」

(初稿)2010年 6月7日

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筆者

中沢 努

早稲田大学文学部で哲学を学び卒業後、同時通訳訓練を受ける。
複数のコンサルティング会社で仕組みによる人間系の問題解決に従事した後、「人間そのもの」に焦点をあてたコンサルティングや教育を開始。

現在は「個の内面に深く入り込む」ことにより組織内の様々な問題解決を行う活動に従事。キャリア30年。

※ 筆者による他の教育資料もご参考下さい。→ ①公開資料集、②コンプライアンス資料庫